社会資源

心理学って何?

心理学って何?

心理学のことを、読心術だと思ってらっしゃる方がいます。
また、心理学を学べば、人の心を操作することが出来るようになると思ってらっしゃる方がいます。

 

いずれも間違っています。

 

以前、私の心理学講座に、某会社の営業マンが来たことがありました。
「何とか、私の会社の扱っている商品をたくさん売ることが出来るようになりたい。どうしたら、お客さんが、『買いたいなあ』という心理になるのか、どうしたら買う気にさせることが出来るのか、どうか教えて欲しい」そう意気込んで来たのですが、 数回来て、「この講座には、私の求めているものはない」と言って去って行きました。

 

そう、心理学を学んでも人の心がわかるようにはならないし、心理学を学んでも、人の心を操作できるようにはなりません。 ここでガッカリされる方がいます。でも本当だから仕方ありません。

 

「では、何のために習うのか?」

 

こういう質問をされる方は、心理学を習えば、自分が生活する上において、何か利得があると思ってらっしゃるようです。が、考古学を習っても、生活において何の利得もないように、心理学を習っても、生活に利得はありません。 こう言うと、ビックリされる方がたくさんいらっしゃいますが、学べば学ぶほど人の心がわからなくなるのが心理学なのです。

 

カウンセラーである私は、誰よりも人の心がわかりません。
いえ、言い直します。
人の心がわからないということを、カウンセラーである私は、誰よりもよくわかっています。

 

心理学を学ぶ前の私は、心なんて、100ぐらいの大きさだと思っていました。(またまた妙な例えですね。どうやら私は、例え話が好きなようです。)そして、100ある心のうち、50ぐらいはわかっているつもりでした。ところが、心理学を学び出した私は、心というのは、実は、1000ぐらいの大きさであるということを知ったのです。
以前は、100のうち50ぐらい、つまり半分ぐらいわかっているつもりだったのですが、学んでからというもの、1000のうちの50ぐらい、つまり20分の1ぐらしかわかっていないことに気付いたということです。

 

心理学を学ぶと、「心というのは、本当に複雑で広くて深いものだ」ということに気付きます。そう、心理学は、人の心の大きさを学ぶ学問なのです。

 

さて、人の心なんてわからないということに気付いた私はどうなったか?

 

そう、以前よりも人の話を一生懸命聞くようになりました。
あの人はああだから、この人はこうだから、とか思わなくなりました。人の心がわからないのですから、人にレッテルとか貼らなくなりましたし、「あの人はこう思っているだろう」とか、「きっと、あの人はこうに違いない」とか思わなくなりました。最初から思い込んだりしないわけですから、裏切られることもなくなりますし、「見損なった」とかいうセリフも吐かなくて済むようになります。

 

私にとって、これらのことは、とっても快適なことでした。
つまり私は、心理学を学んでから、精神的に自由になったというわけです。

 

「私はカウンセラーです」と名乗っておきながら、「私は、人の心がわかります」と言う方がいますが、そういうことを言うカウンセラーはニセモノです。本物のカウンセラーは、「よくわからない。だから、この人の話を一生懸命に聴こう。この人の話に耳を傾けよう」という態度を取ります。
そして、カウンセラーは、人の心はわからないけれど、心理学を学んでいる分だけ、たくさんの事例を知っている分だけ、様々な観点から物事を考えることが出来ますし、様々な仮説を立て、様々な方法を考えることができます。

 

「人の心はわからない。けれど、私が人のことを悪く思っていないように、きっと、人も、私のことを悪くは思わないだろう。」これが心理学を学ぶ人の基本的な態度です。

 

心理学を学ぶことによって、よけいに混乱する人がいますが、そういう人は、私が人のことを悪く思ってないようにという点で、すでにひっかかっているのでないかと思います。心理学を学ぶ人は、自分が混乱しないように、よけいに辛くなることのないように、まずは、自分の心を点検していただきたいと思います。

 

それから、心理学のことを、心を研究する学問だと思ってらっしゃる方がいますが、それも間違っています。心理学では、確かに心を学問していますが、心を研究しているわけではないのです。
どういうことかと言いますと、心は目には見えません。ですから、研究しようがありません。もし研究したところで、それは想像の世界に過ぎないことになり、それでは科学ではありませんし、事実から遠ざかってしまうばかりです。

 

心理学は、科学です、学問です。想像の世界に遊んだりはしません。
では、心理学は何を研究しているか? と言うと、実は心理学は、行動を観察し、行動パターンを研究している学問なのです。「こうすれば、多くの人は、こう行動する」というパターンをたくさん集め、それに仮説を立て、実証する、という研究を繰り返し、ひとつの学説を立てている学問なのです。
「人は、こうすれば、こういう表情をする、もっと言えば、汗をかく、心拍数があがる」というたくさんの事実を積み重ね、たくさんのアンケートを取り、「人は、こうすれば悲しくなる人が格段に多い」という結論を導き出す学問が心理学なのです。

 

ですから、心理学では、満員バスの中で、席を譲ろうと考えながらも、全然席を譲らない人よりも、嫌々ながらでも席を譲る人の方が、優しい、親切な人であると考えます。心の中でどんなに優しいことを考えていようとも、実際に行動しないできない人のことを、心理学では優しい人とは認めません。心の中で、意地悪なことを考えていても、笑顔で挨拶し、実際に行動に移す人のことを、心理学では優しい人と考えます。

 

要するに、心理学は、事実が全てなのです。
本当は優しいとか、心の中は優しいというようなことは、心理学では通らないということです。

 

 

心の金曜日

 


ホーム RSS購読 サイトマップ
トップページ 自己紹介 カウンセリング 講演・研修 著書 社会資源 連絡先